IT 監視ソリューションのビジネスケース作成

IT 監視ソリューションのビジネスケースを作成するために有用と思われる提言をします。ここで紹介する提言は幅広い分野のビジネスケースに当てはまります。

筆者は以前のブログで、DIY ネットワーク監視ソリューションを構築するのにかかるコストについて言及しました。ネットワーク監視ソリューションを導入する際には、当然、次に示すようないろいろなオプションを検討することになります。

  1. 必要なツールを DIY (自社内で) 構築 
  2. 商用のすぐに使える (Commercial Off The Shelf、COTS) ツールを購入
  3. 別会社にカスタム・ツール構築を依頼 
  4. 別会社に管理サービスを依頼 
  5. または、何もしない選択... まだこの選択をする会社が少なからず存在します!

オプションの検討に際して、予算決定権を持った人か事業主がやっかいな課題を出す場合があります。「考慮すべき選択肢をまとめたビジネスケースを作ってくれる?」

予算管理者はいとも簡単に言ってのけますが、筆者のエンジニアとしての経験から言えることは、IT 担当者やエンジニアにビジネスケースを作成するように依頼することほどプロジェクトを遅延させるものはありません。ビジネスケースを求められたら、IT 担当者やエンジニアは、まず、「わかりました。記入するので、テンプレートを送ってもらえますか?」と応答するでしょう。ところが、それに対する答えは、「ああ、テンプレートはないんでね。好きなように作成してくれればいいから。」だったりするのが普通です。

ここにジレンマが発生します。ビジネスケースを作成しなければソリューションは導入できないのでしょうか?残念ながら、こういったケースはよくあります。ビジネスケースは作成されないか、予算決定権を持った人や事業主が予算を投入するべきかどうか判断できるような明確な情報がない、いいかげんな内容で作成されたりします。

ですが、必ずしも悲観的になる必要はありません。ビジネスケースを作成するのはそれほど難しくはありません。少しの工夫で、コンパクトにまとまったものを短時間に作成できます。その方法を探してみましょう。

優れたビジネスケースの要件

このブログでは、ビジネスケースを作成するために有用と思われる提言をします。前のブログとの関連もあり、IT監視ソリューションのビジネスケースを例にとりますが、ここで紹介する提言は幅広い分野のビジネスケースに当てはまります。

まず、ビジネスケースに必要な要件を検討しましょう。

  1. 問題点のアウトライン - ソリューションが必要と考えられるに至った、現在かかえている問題。人的コスト、費用、品質、顧客への影響など、ビジネスへの影響をビジネス用語で表現。
  2. 可能なソリューションの文書化。
  3. 各オプションの期待されるビジネス上の利点および/または投資収益率(ROI)を記述。
  4. 組織にとって最適なソリューションを提案し、理由を説明。

筆者の個人的なモットーは、簡潔さです。ここで筆者の好きな用語を紹介します。それは BCOOP です。Business Case On One Page の頭字語で、ビジネスケースを1ページに収めることを意味します。

なぜかというと、誰もが時間不足だからです。特に毎日幅広い問題について財務上の決定を下さなければならない経営幹部や意思決定者は寸暇も惜しみます。

ビジネスケースを1ページで書き切る: BCOOP

ビジネスケースには、上述の4点に関する以下の問いへの答えを用意する必要があります。

  • 問題は何か?
  • ソリューションとして何が考えられるか?
  • 各ソリューションのROIは?
  • 何が最適ソリューションか?

問題点の記述

問題点の記述から始めましょう。解決するべき問題は何でしょうか?ここで使っている例では、問題は IT 監視ツールがないことです。しかしそれだけでは十分ではありません。問題のために生ずる困難を記述する必要があります。例えば、以下のようにまとめることができます。

IT 監視ツールがないことで生ずる問題: 

  • 金銭的コスト: 顧客が報告したネットワーク問題を手動でチェックして修正するために、フルタイム等価(FTE)で2人の技術者が必要だと見積もると、年間10万ドルのコストに値し、部門の収益性を年間20%、金額で8万ドル削減する。
  • 顧客エクスペリエンスへの悪影響: 顧客のネットワーク問題を迅速に検出できていない。結果として、先月顧客サービス契約が2件失効した。これらの契約は合計年間4万ドルに相当し、財務上の損失になる。

ソリューションの選択肢

BCOOP テンプレートの次の項目で、可能な方策をリストします。

  1. COTS ツールを購入
  2. 自社内でツールを構築
  3. 他社にカスタムツールの構築を依頼
  4. 何もせず現状維持

各ソリューションの ROI

可能なソリューションそれぞれについて、ROI を試算します。例えば次のようにまとめられます。

  • COTS ツールを購入: 購入可能な3つの COTS ツールをチェックした。3年間のレンジで見て、調達、サポート、初期トレーニング/セットアップの総コストは32,500ドル。COTS ツールの導入で、1.5 FTE のエンジニア時間が節約できるため、75,000ドルの節約と、空いた時間の作業で132,000ドルの追加収入を得ることができる。純 ROI は、174,500ドル(75,000+132,000-32,500)。
  • 自社内でツールを構築: 必要な開発スキルや専門知識がないため、我が社の選択肢にはなり得ない。
  • 他社にカスタムツールの構築を依頼: ビジネス要件は COTS ツールで満たすことが可能。カスタムツール開発を外注した場合の見積り額は12万ドル。年間のサポートとメンテナンス料金は1日当たり350ドルで、3年間で195,000ドルに達すると推定。別注ツールの最初のバージョンまでに最低4ヶ月。
  • 何もせず現状維持: 何もしない場合、年間少なくとも20%、8万ドルの収益性の低下が持続。顧客数増加が見込まれるため、顧客満足度を維持するためにはエンジニアを雇用する必要が生ずる。10人の新規顧客ごとに1人のエンジニア、年間5万ドルの追加が必要。

推奨ソリューション

テンプレートの最後のステップとして、判断基準となった情報とともに推奨ソリューションを提示します。この例では、オプション1:COTS ツールの購入が、最も費用対効果の高い方法として推奨されています。

推奨: オプション 1 - COTS ツールの購入

根拠:

  1. ROI がベスト。純 ROI は、174,500ドル。
  2. COTS ツールは購入後即座にインプリメント可能で、すぐに効果が得られる。インストール、設定、トレーニングは3週間以内に完了可能。
  3. 年間のサポートとメンテナンス料(3年間の原価計算に含まれる)を支払うことで、COTS ツールのすべての更新と新機能にアクセス可能。
  4. 節約できるエンジニアの 1.5 FTE を有料サービスに回すことができ、収益増につながる。
  5. COTS ツールで多くの手作業のプロセスを自動化でき、効率化が進む。自動化は、通常、設定だけで完了。

結論:

COTS オプションはコスト節約になるとともに、収益増化にもつながる

コスト節約: 現状ではツールに相当する作業をするエンジニアに対するコストは3年間で30万ドルに達するが、COTS ツールを使用すると、それを10万7,500 ドルに削減でき、合計19万2,500ドルの節約になる。

ROI:  COTS ツールによってエンジニアの 1.5 FTE を新たに課金可能なサービスに回すことができ、これは年間 13万2,000ドルに相当。COTS ソリューションの導入で、顧客増に比例したエンジニア補充をする心配がなくなり、積極的に顧客獲得できる。

BCOOP テンプレートのメリット

BCOOP テンプレートはどこがいいのでしょうか?

まず、「決定を下すのに値する情報」が含まれています。事業主や予算決定権所有者は、ビジネス成果に関心があります。投資収益率や実施に要する時間などの情報が重要です。ここで提示した BCOOP テンプレートには、これらの情報が定量的にも定性的にも提示されています。

BCOOP テンプレートには、意思決定者が必要とするすべての重要な情報が1ページに集約されているので、すばやく簡単に読むことができます。

特定の組織、特に政府/公共セクターまたは大企業の場合は、ソリューションを選択する前に正式な RFP プロセスを実施する必要があります。IT 担当者やエンジニアが頭をかかえる、もう1つのやっかいなビジネスプロセスです。